ITコンサルはAIに仕事が奪われる?ITコンサルの今後の需要と必要なスキルについて解説

人工知能(AI)の発展は、現代社会の多くの分野に革新をもたらしています。
特に、生成AIの出現は、新しいデータやコンテンツの自動生成能力を持ち、これまで人間の独壇場とされてきたクリエイティブな仕事も奪うのではないかと言われています。こうした背景のもと、ITコンサルタントという職業がAIによって取って代わられるのではないかという不安が高まっているのが現状です。
しかし、ITコンサルタントの業務は、単なる情報の分析・解析だけではありません。企業のビジネスニーズを深く理解し、適切なテクノロジーを選定して戦略的な提案を行い、プロジェクトをリードすることにその価値があります。
この記事では、AIの進化がITコンサルタントの需要と必要なスキルにどのような影響を与えるのかを解説します。併せて、ITコンサルタントがこれからも業界で生き残るためには何が求められるのかについても説明するのでぜひ参考にしてください。

目次

監修

荒木大介

株式会社ARK 代表取締役社長/プレジデント・シニアコンサルタント
1998年~ マカフィー株式会社
2002年~ ベリタスソフトウェア株式会社 (現シマンテック) : アカウントマネージャー
2004年~ インテル株式会社 : セールスマネージャー
2013年~ 株式会社ARK : 代表取締役

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ITコンサルとは

ITコンサルタントは、現代のビジネス環境において不可欠な役割を果たす専門家です。情報技術(IT)の急速な進化とそのビジネスへの影響が拡大する中で、企業は日々、新しい技術を導入し、既存のシステムを最適化して競争力を保つ必要に迫られています。
こうした状況において、ITコンサルタントは、クライアント企業に対してIT戦略の策定、業務改善の提案、システムの導入や最適化、リスク管理など、幅広いコンサルティングサービスを提供します。
ITコンサルタントの主な任務は、クライアントのビジネスニーズや課題を深く理解し、それに適したITソリューションや戦略を開発し実装することで、企業の業績向上や効率化を支援することです。このプロセスには、新しい技術の選定から、それを活用したビジネスモデルの提案、さらにはシステムの導入や運用の指導に至るまで、多岐にわたるスキルと知識が必要とされます。
ITコンサルタントの役割は単に技術的な提案をするだけに留まらず、クライアントのビジネス戦略に密接に結びついた提案を行うことで、企業の成長や変革を促します。ITコンサルタントは、企業が直面する課題を技術的な視点から解析し、革新的なアプローチで解決策を提供することで、企業のIT投資の価値を最大化するのが最も重要な仕事です。
また、デジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の経営戦略として重要視される現在、ITコンサルタントの役割はさらに重要性を増しています。

ITコンサルに必要なスキル

ITコンサルタントは、テクノロジーがビジネスに与える影響を最大限に活用し、企業の成長や効率化を支援する役割を担います。この重要かつ複雑な役割を果たすためには、特定のスキルセットが必要です。以下では、ITコンサルタントが持つべき核となるスキルについて詳しく解説します。

情報の分析・解析能力

ITコンサルタントは、自社やクライアント企業が直面する課題を明らかにし、それに対する解決策を策定することが主な業務です。円滑な業務の遂行には、クライアント企業が保有する膨大なデータや資料から、問題点を正確に見つけ出し、これを分析・解析して適切な解決策を導き出す能力が不可欠です。このスキルは、データ駆動型の意思決定を支援し、戦略的なアドバイスを提供する上で、中心となります。

コミュニケーション能力

ITプロジェクトを成功に導くためには、チームメンバーやクライアント企業との効果的なコミュニケーションが欠かせません。ITコンサルタントは、データ収集、クライアントの要望や課題のヒアリング、そして提案したソリューションを論理的に説明することが求められます。プロジェクトをスムーズに進めるためには、明確かつ効果的にコミュニケーションを取る能力が不可欠で、このスキルはクライアントとの信頼関係構築にも寄与します。

ITの認定試験にパスできる知識

特定の免許や資格が必須とは限りませんが、ITコンサルタントとしてのスキルを証明するために多くの専門家が資格取得を目指します。特に、高度情報処理技術者試験の一つである「ITストラテジスト試験」は、ITコンサルタントとしての深い知識と高度な分析能力を証明するものとして、高い評価を受けている資格です。この試験は、IT戦略の立案から実行までをカバーする難易度の高い試験であり、合格することで、ITコンサルタントとしての専門性と信頼性が認められるでしょう。

高みを目指す場合は英語力

外資系IT企業では、英語ができる社員はごく一部です。そのため、基本的な読み書きに大きな抵抗がなければ、積極的にチャレンジしてみるべきでしょう。
英語が堪能であれば、より幅広いプロジェクトに参加できる機会が増え、キャリアの選択肢が広がります。しかし、だからといって転職の際にTOEICのスコアなど具体的な指標が必ずしも必要とされるわけではありません。
キャリアにおいて高みを目指す場合は、英語力を身につけることでグローバル市場での競争力を高め、ITコンサルタントとしての価値をさらに向上させることにつながるでしょう。

ITコンサルはAIに仕事が奪われる?

近年、AI(人工知能)の進化は目覚ましく、多くの業界でその影響が議論されているところです。
特に生成AIの出現により、クリエイティブな仕事さえもAIが行う時代が来るのではないかという予測もされています。このような背景の中、ITコンサルタントの将来についても「AIに仕事が奪われるのではないか」という不安が広がっています。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか?ここでは、AIがITコンサルの仕事に与える影響について考えていきましょう。

生成AIとは

生成AI(Generative AI)とは、機械学習やディープラーニングの技術を基に、新しいデータやコンテンツを自動で生成する人工知能の一種です。生成AIは、元となるデータセットから学習し、それをもとにして全く新しいテキスト、画像、音楽などを生成することができます。例えば、ある特定のスタイルで書かれた文章を元に、新しい文章を生成したり、既存の画像を参考にして新しい画像を作り出すことが可能です。生成AIの進化は、コンテンツ制作のみならず、データ分析や問題解決のプロセスにも革新をもたらすと期待されています。

AIが進化してもコミュニケーションが大切なITコンサルは求められる

AI、特に生成AIの能力は確かに情報の分析・解析に長けており、これまで人間が担ってきた多くのタスクを自動化、あるいは効率化する可能性を秘めています。これにより、ITコンサルタントが行うような、クライアント企業の保有する膨大なデータや資料から問題点を見つけ出し、解析・解決策を導き出すプロセスは、AIによって一部代行されるかもしれません。
しかし、ITコンサルタントの仕事の本質は、ただ単にデータを分析・解析することだけではありません。クライアント企業との深いコミュニケーションを通してビジネスニーズや課題を理解し、それに基づいた解決策を提案し、実行に移していくプロセスが重要です。また、プロジェクトチームとのコミュニケーションを通じて、多様なバックグラウンドを持つメンバー間の調整や協力を促進し、プロジェクトを成功に導く能力も求められます。
これらの点から考えると、AIが進化しても、ITコンサルタントの仕事が完全に置き換わることはないでしょう。人間特有のコミュニケーション能力や、複雑な人間関係の中で最適な解決策を見出し、それをクライアントに納得してもらうための説得力、そしてビジネス全体を俯瞰し戦略的な提案を行う能力など、AIには難しい領域が数多く存在します。

ITコンサルになるメリット

現代のビジネス環境では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が加速し、企業はテクノロジーを駆使して業務の効率化や革新を求めています。このような背景のもと、ITコンサルタントの役割が注目され、その需要は高まる一方です。ITコンサルタントとしてのキャリアは、多くのメリットをもたらし、専門家としての成長だけでなく、経済的な報酬も見込めます。

DX化を進める企業が増えたことで職種のニーズが高い

DX化とは、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや業務プロセスを変革し、新たな価値を創出する取り組みを指します。このDXの推進には、専門的な知識と経験を持つITコンサルタントが不可欠です。企業はDXの実現に向けて、戦略の策定やシステム導入、業務の最適化など、幅広いサポートを求めており、これがITコンサルタントのニーズを高めています。デジタル技術の急速な進化に伴い、この傾向は今後も続くと予想されます。

IT関連産業で最も年収が高い

ITコンサルタントは、その専門性と企業への貢献度によって、非常に高い年収を得ることが可能です。
特に外資系企業においては、年齢や経験に応じて、さらに高い収入を見込めます。これは、ITコンサルタントの持つ専門性や企業への影響力が高く評価されていることの表れであり、外資系企業では特に成果主義が根付いているため、結果を出せば出すほど報酬に直結する傾向にあります。
以下は外資系ITコンサルタント会社でのキャリアの目安を年齢、年収、職位に分けた表です。

年齢年収職位
新卒~20代中盤400~500万円アナリスト
20代中盤~ 500~700万円コンサルタント
20代中盤~30代前半700~900万円アソシエイトマネージャー
20代後半~30代後半900~1,500万円マネージャー
30代前半~30代後半1,500~2,300万円~シニアマネージャー
30代後半~1,800~2,500万円プリンシパルアソシエイトディレクター
2,500万円~マネジングディレクター

DXの波は今後も加速し続け、多くの企業がデジタル変革を進めていくでしょう。
そのため、ITコンサルタントの需要はさらに高まり、デジタル技術を駆使して企業の課題解決や価値創造を実現できる専門家は大きなチャンスを迎えることになります。また、外資系企業における実力主義の文化は、ITコンサルタントにとって自身のスキルと成果を最大限に活かし、報酬とキャリアアップの機会を広げることを可能にします。

まとめ

AIの急速な発展にも関わらず、ITコンサルタントの需要は今後も高まることが予想されます。その理由は、ITコンサルタントの業務が単にテクノロジーの選定やシステムの導入にとどまらず、クライアントとの深いコミュニケーションや戦略的な思考を要する仕事だからです。
AIは情報の分析や一部の問題解決を効率化することはできますが、ビジネスの現場においては、それを超える人間特有の洞察や柔軟な思考が必要とされます。
今後のITコンサルタントに求められるスキルとしては、技術の深い理解に加え、クライアントとのコミュニケーション能力、そしてプロジェクト管理能力が挙げられます。さらに、グローバル化が進む中、英語力も重要な資質となるでしょう。
DX化が進む中で、ITコンサルタントは今後も企業にとってかけがえのない存在であり続けるはずです。AIの進化とともに、新たな技術を取り入れ、自身のスキルセットを拡充することで、ITコンサルタントはこれからもビジネスの世界で必要とされる仕事であると言えるでしょう。

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