Sier業界大手アクセンチュアで働くには?SierとITコンサルの違いも解説

IT業界でのキャリアを考える際、SIerとITコンサルタントの違いや、それぞれの仕事に求められるスキルを理解することは重要なポイントです。特に、SIer業界の大手であるアクセンチュアでは、システム開発とコンサルティングの両方を展開しており、幅広い専門知識と実務経験を持つプロフェッショナルを求めています。
本記事では、アクセンチュアで働くために必要なスキルや、SIerとITコンサルタントの違いについて詳しく解説します。

目次

監修

荒木大介

株式会社ARK 代表取締役社長/プレジデント・シニアコンサルタント
1998年~ マカフィー株式会社
2002年~ ベリタスソフトウェア株式会社 (現シマンテック) : アカウントマネージャー
2004年~ インテル株式会社 : セールスマネージャー
2013年~ 株式会社ARK : 代表取締役

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SierとITコンサルはどう違う?

SIer(システムインテグレーター)とITコンサルタントは、いずれもIT分野で企業を支援する役割を担っていますが、その業務内容や求められるスキルには大きな違いがあります。SIerは、主に企業の情報システムの構築や運用を担当するのに対し、ITコンサルタントは、企業の経営課題をITの側面から解決することを目的としています。
ここでは、それぞれの特徴と必要なスキルについて詳しく見ていきましょう。

Sierとは

SIer(システムインテグレーター)は、クライアントの要望に応じて情報システムの構築から運用に関わるサービスを提供する受注開発企業です。企業から依頼されたシステム開発を請け負い、システムの設計、開発、導入、運用、保守までを一貫して行います。SIerは、以下の4つの種類に分けられます。

● メーカー系SIer
ハードウェアメーカーの開発部門が独立したもので、親会社のハードウェアやソフトウェアを使った開発に強みがあります。具体例としては、日立製作所や富士通、日本電気(NEC)などがあります。

● ユーザー系SIer
一般企業の情報システム部門が独立して設立されたもので、親会社を通じて幅広い開発実績があります。野村総合研究所(NRI)や伊藤忠テクノソリューションズ、日鉄ソリューションズなどが該当します。

● 独立系SIer
親会社を持たず、独自に設立されたSIerです。クライアントの要望に沿った自由度の高いシステム設計が特徴です。TIS、大塚商会、富士ソフトなどが独立系SIerにあたります。

● 外資系SIer
海外の大手IT企業の日本法人で、システム領域におけるコンサルティング業務に強みがあります。アクセンチュアや日本IBM、日本ヒューレット・パッカード(HP)などが代表的です。

アクセンチュアは外資系SIerの一例であり、システム領域でのコンサルティング業務に強みを持っています。

SEに必要なスキル

SE(システムエンジニア)としてSIerで働くためには、以下のようなスキルが必要です。

● ITスキル
SE自身がプログラミングを行う機会は少ないものの、ITに関する深い知識が求められます。この知識がないと、開発を担当するビジネスパートナーに対して的確な指示を出すことが難しくなります。
● マネジメントスキル
プロジェクトを円滑に進め、納期通りに納品するためには、プロジェクトマネジメントのスキルが重要です。プロジェクト全体の進捗を管理し、関係者との調整を行う力を指します。
● 論理的思考力
システムの設計工程では、論理的に矛盾のない仕様書を作成することが求められます。論理的思考力が欠けていると設計の段階でミスが生じ、その後の開発に大きな影響を及ぼすことがあります。

SIerとITコンサルタントは、IT分野で企業を支援するという点では共通していますが、課題へのアプローチや求められるスキルは大きく異なります。それぞれの役割を理解し、自身のキャリアプランに合わせてどちらの道を選ぶかを考えることが重要です。

ITコンサルとは

ITコンサルタントとは、情報システムを用いて企業が抱える経営課題を解決する役割を担う専門家です。主にシステム開発や設計の初期段階、いわゆる上流工程に関わることが多く、企業の経営戦略や業務プロセスの改善を支援します。しかし、近年では、経営に直結する効率的な情報システムを求めるクライアントが増加しており、ITコンサルタント自身が情報システムの構築にまで精通することが求められています。ITコンサルタントには、クライアントに対して包括的なサービスを提供し、経営課題をITの側面から解決する力が必要なのです。アクセンチュアでは、コンサルティング事業と情報システム分野の両方において幅広く事業を展開しています。システム開発とコンサルティングの両方に携わることで、SIerとITコンサルタントの両方の視点とスキルを身につけることが可能です。

ITコンサルタントに必要なスキル

ITコンサルタントとして成功するためには、以下のスキルが重要です。

● ITの実用的なスキル
ITコンサルタントには、クライアントの経営問題を解決するための実用的なIT知識が求められます。ここで必要なスキルは、システムエンジニア(SE)に求められるものとは異なります。SEにはシステムの実装面に関するスキルが必要ですが、ITコンサルタントには、IT技術を用いて経営課題をどのように解決するか、そしてそのための費用をどのくらいかけるかを想定する力が求められます。

● マネジメントスキル
ITコンサルタントは、自分自身が実装を行うわけではありません。そのため、クライアントとコミュニケーションを取り、プロジェクトを円滑に進めるためのマネジメントスキルが必要です。プロジェクト全体の進捗を管理し、クライアントの要望を的確に反映させるために不可欠なスキルです。

● 論理的思考力
クライアントが抱える課題を分析し、論理的に解決策を考えるための力が求められます。論理的思考力がなければ、課題を正確に特定することができず、効果的な解決策を提供することが難しくなります。

● 経営・事業に関する知識
ITコンサルタントは、ITシステムの構築が主な業務であるSEとは異なり、「クライアントの課題解決」に携わります。そのため、経営の観点からクライアントに対して戦略を提案するための知識が必要です。経営や事業に関する深い理解を持つことで、クライアントのビジネスに対して効果的なIT戦略を立案し、実行することが可能になります。

ITコンサルタントは、これらのスキルを駆使してクライアントの経営課題をITの側面から解決し、企業の成長を支援します。システムの実装だけでなく、経営戦略の策定から実行までをサポートするため、幅広い知識とスキルが求められる職種です。

アクセンチュアとは

アクセンチュアは、グローバル規模で展開する外資系コンサルティング会社で、特にITと経営戦略の両面から企業の課題解決に取り組むことを得意としています。外資系企業としての高い実績と革新的なアプローチにより、多くの企業や公的機関から信頼を得ています。特に、デジタルトランスフォーメーションや先端テクノロジーの導入支援において、業界をリードする存在です。

アクセンチュア株式会社の概要

アクセンチュア株式会社は、SIer業界大手5社のひとつであり、1953年に創業しました。当初からコンピューターをビジネスに導入するパイオニアとして、コンサルティング業務を開始します。現在も課題を抱える企業や公的機関に対して、幅広いサービスを提供しています。特に、先端テクノロジーをビジネスに活かす能力が強みであり、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する役割を担っています。

アクセンチュアは、ビジネスコンサルタント、デジタルコンサルタント、戦略コンサルタントなどの多岐にわたるコンサルタント職を擁しています。また、ソリューション・エンジニア、マーケティング、デザインなど、専門性の高い部門にも力を入れており、多様なプロフェッショナルが在籍しています。この多様性により、クライアントに対して包括的かつ専門的なサービスを提供することが可能となっています。さらに、アクセンチュアは経験者(中途)の正社員採用の割合が約8割に達しており、幅広い業界経験と専門知識を持つプロフェッショナルが集まる企業です。このような採用方針により、常に最新の知識と技術を取り入れ、クライアントに対して最適なソリューションを提供しています。アクセンチュアの強みは、技術革新とビジネス戦略の融合による問題解決力にあり、多くの企業が直面する複雑な課題に対して効果的な支援を行っています。先進的なテクノロジーと深い業界知識を活かし、企業の成長と変革をリードするパートナーとして信頼を築いている企業です。

アクセンチュアの社風

アクセンチュアは「外資系」と聞いてイメージされがちなピリピリとした雰囲気とは異なり、手厚いサポート体制が整っています。社員同士の協力が重視されており、特に新しいメンバーに対しても親切で、温かく迎え入れる文化があることが特徴です。仕事は基本的にチームで協力して取り組むスタイルが主流です。プロジェクトごとに高いクオリティとスピード感が求められるため、各メンバーが力を合わせて効率的に業務を進めることが重要とされています。また、個々の意見やアイデアが尊重され、それらを基にした提案を積極的に採用する環境も整っています。さらに、会社全体に「限られた時間で効率的に成果を出す」という風潮が浸透しており、これがワークライフバランスの取りやすさに繋がっています。アクセンチュアは、プロジェクトの忙しい時期にもフレックス制度を活用したり、プロジェクト間の休暇を取得したりすることで、社員が仕事と私生活のバランスを保てるよう支援しています。結果として、アクセンチュアではメリハリのある働き方が実現されており、仕事に集中しながらもプライベートの時間を大切にすることが可能です。

アクセンチュアへ転職するには

アクセンチュアへの転職は、多様な専門知識や実務経験を持つプロフェッショナルにとって魅力的な選択肢です。特に先端テクノロジーを活かしたコンサルティングやシステム開発に携わりたいと考える方には最適な環境と言えるでしょう。
では、具体的にどのような知識や経験が求められるのか、またどのようなスキルが重要視されるのかを見ていきましょう。

専門知識・実務経験

アクセンチュアでは、それぞれの部門で専門性の高い仕事内容を扱うため、経験者採用では特定の分野における専門的な知識や業界での実務経験が重視されます。例えば、システム開発や先端テクノロジーを活かしたコンサルティングを行うためには、IT分野に関する深い知識が必要となります。応募者は自分の専門性に合わせて、適性に合った職種に挑戦することが可能です。

専門的な知識・経験が求められる職種の例

アクセンチュアにおいて専門的な知識・経験が求められる職種の例としては次のようなものがあります。

● エンジニア職採用の例
AIエンジニア: この職種では、お客様に向けてAI技術を活用した業務変革を提案し、システムの開発や運用保守を行います。また、社内システムの統一や働き方の改善にも携わります。応募要件として、システム開発の経験やシステム企画から運用までの全ての経験が求められます。さらに、生成AIに関する知識や生成AIを利用したアプリ開発の経験、データ分析の技術があると望ましいです。

● コンサルティング職採用の例
データサイエンティスト/データドリブン コンサルタント: この職種では、クライアントの経営課題や社会課題に対し、データ分析能力と経営コンサルティング能力の両面を駆使してアプローチします。必要なスキルとしては、論理的思考力や洞察力、コミュニケーション力といったコンサルタントとしての基礎的能力が挙げられます。また、データ分析の経験やデータ分析チームとの協業経験も求められます。

語学力

アクセンチュアの公式採用FAQによると、募集職種によってはビジネスレベルの英語力が求められることがありますが、全ての職種で必須条件ではありません。したがって、必ずしも英語力が必要というわけではありませんが、英語力を求められる一部の職種に応募する場合は、語学力向上にも取り組みましょう。外資系企業だからと言って社員全員が英語を話せるわけではないため、簡単な読み書きに大きな抵抗がなければ積極的に挑戦してみると良いでしょう。

このように、アクセンチュアへの転職を目指す際には、専門知識や実務経験、必要に応じて語学力を磨くことが重要です。自身のスキルセットに合った職種に応募することで、アクセンチュアでのキャリアを成功させるための第一歩を踏み出すことができるでしょう。

まとめ

SIerとITコンサルタントの違いを理解することは、IT業界でのキャリア選択において非常に重要です。SIerはクライアントの要望に応じたシステム開発が主な業務である一方、ITコンサルタントは情報システムを用いてクライアントの課題を解決することが主な業務です。どちらの職種でもITスキルは必要ですが、その内容は大きく異なります。
アクセンチュアは、IT業界の中でもSIerとITコンサルタントの両面で強みを持つ企業です。システム開発とコンサルティングの両方のスキルを高めたい方にとって、アクセンチュアでのキャリアは非常に価値のあるものとなるでしょう。また、手厚いサポート体制と協力的な社風が特徴で、働きやすい環境が整っています。
転職活動時には、ITに関する専門知識や実務経験が求められるため、これらのスキルを磨いておくことが重要です。語学力は必須ではありませんが、職種によっては必要となる場合があります。アクセンチュアでのキャリアを考える際には、これらのポイントをしっかりと把握し、自分のスキルや経験に合った職種に挑戦してください。

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