ITコンサルとして働くうえで中小企業診断士の資格は必要?転職で有利になるの?

ITコンサルタントとして活躍する上で、中小企業診断士の資格がどの程度役立つのか、また転職市場で有利になるのか、という疑問は多くのIT専門家にとって重要なテーマです。この記事では、中小企業診断士の資格を取得するメリットと、ITコンサルタントとしてのキャリアにおけるその価値を深堀りしています。
資格が業務遂行能力や転職活動におけるアドバンテージに直結するのか、具体的な観点から考えていきましょう。

目次

監修

荒木大介

株式会社ARK 代表取締役社長/プレジデント・シニアコンサルタント
1998年~ マカフィー株式会社
2002年~ ベリタスソフトウェア株式会社 (現シマンテック) : アカウントマネージャー
2004年~ インテル株式会社 : セールスマネージャー
2013年~ 株式会社ARK : 代表取締役

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中小企業診断士の資格はITコンサルとして働くために役立つ?

ここではまず中小企業診断士の資格の概要について解説していきましょう。

中小企業診断士とは?

中小企業診断士は、経営に関する深い知見と専門的なスキルを持ち、中小企業を支援する専門家です。
中小企業診断士の資格は、経営コンサルタントとしての能力を国が認定するもので、企業の様々な課題に対して、適切な診断とアドバイスを提供できる能力を有する人材を認定します。日本版のMBA(経営学修士)とも評されることがあり、その専門性の高さが評価されている資格です。独立を目指す方はもちろんのこと、企業に在籍しながらキャリアアップを図りたい人や、マネジメント職へのキャリアチェンジを考えている人にとっても、中小企業診断士の資格は大きな価値を持っています。

中小企業診断士が注目される理由とは?

中小企業診断士は、多岐に渡る経営に関する知識や、資格取得に必要な実務修習などに基づき、その経営課題への解決力を客観的に評価できる資格です。つまり、国が認めたコンサルティングのプロとしてセルフブランディングが可能となります。また、経営課題はどの企業も抱えているため、資格を取得すれば独立せずとも企業内でそのスキルを発揮できるのも魅力の1つと言えるでしょう。
その難易度の高さから、先述の通り日本のMBAとも評される資格ですので、企業内でのさらなる活躍や転職先へのアドバンテージとして利用できるのもメリットです。

ITコンサルとして中小企業診断士の資格を取るメリット

ITコンサルタントにとって、中小企業診断士の資格を取得することは、経営コンサルティングの分野での専門性を高めるだけでなく、キャリアアップのチャンスを広げ、社内外での信用を獲得する有力な手段となり得ます。経営の体系的な知識が身につき、経営課題の分析から解決策の提案まで、より質の高いアウトプットを提供できるようになるでしょう。

経営に関する体系的な知識が身につく

中小企業診断士の資格を通して、ITコンサルタントは経営に関する体系的な知識を習得します。経営に関する知識は、単に現在直面している業務改善のみならず、組織全体が抱える根本的な課題への対応にも活かせるものです。実務経験や断片的な情報だけに頼るのではなく、確固たる理論と実証に基づいたアドバイスが可能となり、ITコンサルタントの視野が一層広がります。

キャリアアップを目指すことができる

中小企業診断士としての日々の学習は、経営課題の分析とそれに応じた戦略的なアドバイスを行う能力を磨くことに直結します。専門的なアドバイスを行う能力はITコンサルタントにとっても非常に重要なスキルです。企業内での昇進やより大きなプロジェクトへの参加、新たな職務領域への挑戦へと繋がります。実際に経営の現場で求められる能力を身に付けることで、キャリアの可能性が拡がります。

社内外での信用が得られる

経営コンサルティングに関する唯一の国家資格である中小企業診断士の資格は、持つ人の信頼性を高める資格です。社内で新しいプロジェクトや責任のある仕事を任されやすくなるなど、ITコンサルタントとしての価値を客観的に証明するものです。また、社外での人脈構築や次のキャリアステップへの足掛かりともなり得ます。

社外での人脈が期待される

中小企業診断士の資格を取得するためには実務補習が必須です。実務補習は多くの場合、グループで行われるため、異なる背景を持つ他の受講者との出会いがあり、新しい人脈を築く絶好の機会となります。
また、診断士協会やグループ活動への参加を通じて、より広範なネットワークを構築することが可能です。これは転職やキャリアの展開において、大きなアドバンテージとなるでしょう。中小企業診断士としての資格は、社外での人脈構築においても大きなメリットとなるでしょう。特にITコンサルタントとして独立を考えている場合や、新たなビジネスチャンスを模索している場合には、この人脈は貴重な資源となり得ます。
実際に、中小企業診断士のネットワークは、様々な業界や分野の専門家が集まる多様なものです。ここから新しいビジネスのアイデアを得たり、共同でプロジェクトを立ち上げることが可能になることもあります。また、経営課題に特化したアドバイスができる能力は、クライアント企業だけでなく、ビジネスパートナーからも高く評価されることでしょう。

ITコンサルを目指すために中小企業診断士の資格を取得するには

ITコンサルタントを目指す上で中小企業診断士の資格はそのキャリアパスにおいて貴重な強みとなるものです。中小企業診断士の資格を取得することで、経営に関する深い知識と幅広い視野を身につけ、経営課題の診断と改善提案ができる専門家として、業界内外での信頼と評価を獲得できるでしょう。

中小企業診断士の試験とは?

中小企業診断士の試験は1次試験と2次試験に分かれて実施されます。
1次試験は、選択式の筆記試験で、経済学や経営法務、財務会計などの幅広い分野から出題される試験です。1次試験に合格した方は、更に2次試験の筆記試験(記述式)に進みます。
2次試験では、より専門的な知識と経営に関する深い理解が問われ、解決策の提案能力も評価されます。実際の経営課題に対して、どのような解決策を提示できるかが記述式で問われる試験です。全科目の平均が60点以上で、かつ40点未満の科目がなければ、試験合格となります。
2次の筆記試験に合格後に行われる口述試験は面接形式で、ここでは受験者の対人スキルや現実的な経営課題への対応能力が試されます。近年では口述試験の合格率が高く、ほぼ全員が合格しているのが特徴です。
口述試験に合格した後は、実務補習を修了することで、中小企業診断士として正式に登録されます。

中小企業診断士の難易度は?

中小企業診断士試験は、その幅広い試験範囲と高い合格基準から、難易度が高い試験として知られている試験です。
2009年以降、1次、2次試験の合格率は、良い年で25%程度、低い年では15%程度で推移しており、トータルの試験合格率は平均して4.9%となっています。そのため、試験に短期間で合格する人もいれば、長期間試みてもなかなか合格できない人もいます。
試験の成功の鍵は、出題傾向を明確にして、試験に出やすい分野を重点的に勉強することです。自己の弱点を克服し、幅広い知識を身につけるために、計画的かつ効率的な学習方法を見つけることが重要となります。
ITコンサルタントとして中小企業診断士の資格を取得することは、経営コンサルティングの能力を証明すると同時に、IT分野における専門性をさらに深める機会を提供するものです。試験の難易度は高いものの、合格した際の報酬は、自己のキャリアにとって大きな価値を持つでしょう。

中小企業診断士資格を取得するとITコンサルへの転職にプラス

コンサルティング業界では、多様な業界やビジネスモデルに対する理解と、具体的な課題解決のための提案力が求められます。中小企業診断士資格は、経営コンサルタントとして必要な広範囲の知識とスキルを有していることを示すため、特に経験が豊富な人にとって、そのキャリアにプラスとなるでしょう。
中小企業診断士の資格を持つことで、ITコンサルタントとして求められる経営戦略の策定や、組織全体のIT戦略に関する提案に対し、より具体的かつ実践的なアドバイスができるようになります。また、クライアント企業の経営層とのコミュニケーションにおいても、経営に関する専門的な知識を背景にした提案が可能になり、信頼関係の構築に貢献できることでしょう。
ただし、資格を取得しただけでは、すぐに高い評価を受けるわけではありません。重要なのは、その資格を活かしてどのように実務経験を積み、どのように専門性を高めていくかです。また、転職活動においては、資格だけでなく実際の業務経験や面接・選考対策も大切です。資格が示す専門性を実際のビジネスシーンでいかに活かしていくかが、転職成功の鍵を握っています。
中小企業診断士の資格は、ITコンサルタントへの転職において、強固なバックグラウンドとなり得ます。しかし、その資格を取得すること自体が目的ではなく、どのようにしてその知識とスキルを実務に活かし、自身のキャリアをさらに発展させていくかが重要です。資格取得後も学び続け、常に最新のトレンドや技術に精通し、自己の市場価値を高めていく努力が求められます。

まとめ

中小企業診断士の資格は、ITコンサルタントとしてのキャリアを目指すにあたって、一定のメリットを提供します。特に経営戦略の理解や、組織における課題解決の提案能力向上に寄与することで、業務の質を高めることが可能です。
また、転職市場においても、この資格は専門性や知識の幅を示す一つの指標となり、ポジション獲得の際に有利に働くことが期待されます。しかし、最終的には資格をどのように活かし、自己のスキルと経験を積み重ねていくかが、成功への鍵を握っています。
資格取得はあくまでスタートラインであり、持続的な学習と成長がこれからのキャリアを形作っていくことを忘れないようにしましょう。

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